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2022/9/30 新着情報
【ドラフトへの軌跡】第9回 内藤鵬(日本航空石川) 3年 三塁手
2022年6月4日 高校野球春季北信越大会
日本航空石川11-3敦賀工
 

内藤鵬(日本航空石川) 3年 三塁手 180cm100kg 右投右打



© 野球太郎
 

 高校生野手では第1回で取り上げた浅野翔吾(高松商)とともに、自分の中で今年見なければならない選手として優先度が高かったのが今回紹介する内藤鵬だ。初めてプレーを見たのは2020年秋の北信越大会。4番に座った内藤は2試合で7打数5安打をマークし、1年生とは思えないバッティングは強く印象に残っている。昨年秋は北信越大会出場を逃していたため、早めに見に行った方が賢明だと考え、4月30日に行われた石川県大会の対津幡高校戦に足を運んだが、キャッチボールにもシートノックにも内藤の姿が見当たらない。


 一瞬コロナ感染を疑ったが、試合前の整列には並んでいるのを見て、何か異常があったことを悟った。結局内藤の出場はなく、試合後にチームの中村隆監督に話を聞くと、守備で左肩を痛めているという。投手の場合、お目当ての選手が登板しないことも珍しくないが、野手で“空振り”するケースはなかなかないだけにこの時のショックは大きかった。また、内藤が欠場していることをツイートすると、多くの人から「内藤、どうしたんですか?」という連絡が入り、そのことからも注目度の高さがうかがえるだろう。


 前置きが長くなったが、仕切り直して訪れたのがこの北信越大会の初戦だ。会場となった敦賀市総合運動公園野球場のスタンドには一般席とは別にスカウト席が設けられており、8球団20人以上のスカウトが訪れていたが、その前で内藤はさすがのバッティングを見せることになる。第1打席こそ緩い変化球にタイミングが合わず空振り三振に倒れたものの、第2打席では深く守っていたレフトの頭を軽々と超えるツーベースを放つと、四球を挟んだ第4打席ではレフト線へこの日2本目となるツーベースでマルチヒットを記録。8回の第5打席でも会心の当たりではなかったもののライト前に落とすタイムリーを放ち、3安打2打点と4番としての役割をしっかり果たして見せたのだ。


 まず目についたのが体格の変化だ。体重は100kgという巨漢だが、1年時に比べると明らかに体が締まり、上半身も下半身も筋肉量が増えたように見えた。パワーはもちろん高校生離れしたものがあるが、それ以上に目立つのがスイングの柔らかさだ。上半身の力を上手くぬいてスムーズに振り出すことができており、それでいながらヘッドスピードもインパクトの強さも際立っている。これまでのコラムで取り上げた浅野や西村瑠伊斗(京都外大西)が全身をフルに使ってボールを飛ばしているのに対して、内藤は軽々と振って飛距離が出るというのは大きな魅力である。


 夏は厳しいマークもあって4試合で2安打と苦しんだが、そのうち1本はセンター左への特大の一発で改めてパワーがあるところを見せている。また、春の北信越大会では3試合で6割を超える打率を残し、高いレベルの相手にもしっかり結果を残せるというのを示したのは大きなアピールとなったはずだ。長距離砲としてポテンシャルは大学生、社会人も含めても今年の候補ではナンバーワンという印象だけに、将来の中軸候補が欲しい球団は真っ先に指名することも十分に考えられるだろう。


西尾 典文 Norifumi NISHIO


1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などを テーマに野球専門誌に寄稿を開始。2017年からはスカイAのドラフト会議で解説を務め、2021年には仮想ドラフト会議にも出演。
アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材する熱血スポーツライター。

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