2024年5月23日 都市対抗野球東京二次予選 大田スタジアム
JR東日本4-5NTT東日本
野口 泰司(NTT東日本)
23歳 捕手 180㎝94㎏ 右投右打 栄徳→名城大
© 野球太郎
高校や大学時代にプロ志望届を提出しながら指名漏れとなり社会人に進む選手は少なくないが、指名解禁となる2年後にプロ入りをつかむ選手となるとかなり絞られることとなる。企業チームの選手は支配下ドラフトでのみ指名が可能という取り決めがあるということも影響しており、野手については過去5年間で平均すると1年あたり約4名という狭き門となっている。特に大学卒の社会人捕手となると、2017年の大城卓三(NTT西日本→巨人3位)と松本直樹(西濃運輸→ヤクルト7位)が最後であり、より指名を受けることが難しいのが分かるだろう。
ただ今年はそんな大学卒の社会人に注目選手が複数いる。その1人がNTT東日本の野口だ。社会人1年目の昨年は指名打者での出場が多かったものの、2年目の今年は正捕手に定着。そして大学時代と比べて大きく成長したのが守備面だ。イニング間のセカンド送球は2.00秒を切れば強肩と言われるが、この試合で計測できた6回全てで2.00秒未満を記録。最速は1.80秒とプロでも上位のタイムをマークした。特に改善されたのがフットワークで、たくましい体格でありながらしっかり足を使って投げることができるようになり、コントロールも明らかに安定した印象を受ける。相手のJR東日本は足の速い選手が多いが、野口の送球もあって一度も盗塁をしかけてくることはなかった。
持ち味であるバッティングも社会人でさらに磨きがかかったように見える。大学時代は少し引っ張る傾向が強かったものの、今年はしっかりボールを呼び込んでセンター中心に打ち返せるようになったのだ。ツーアウト三塁のチャンスで迎えた第1打席では初球をとらえてセンターオーバーのタイムリーツーベースを放って見せた。ヒットはこの1本だったが、その後の3打席でもしっかり自分のスイングができており、常に長打が出そうな雰囲気は十分だった。
野口の活躍もあってチームは2年ぶりに都市対抗予選を突破。7月に行われた本大会では残念ながら初戦で敗れたものの、野口はツーベースを含む2安打と存在感を示した。現在のプロ野球界は“投高打低”の傾向が強く、打てる捕手は貴重なだけに2年前に逃したプロ入りの可能性も高いだろう。
西尾 典文 Norifumi NISHIO