トヨタ自動車3-1西濃運輸
吉野光樹(トヨタ自動車) 24歳 176㎝78㎏ 右投右打 九州学院→トヨタ自動車
© 野球太郎
社会人野球で最大の大会と言えば都市対抗野球だが、本選以上に過酷だと言われるのがその出場権をかけた予選だ。中でも東海地区の二次予選は出場チーム数も多く、敗者復活戦に回ると連日試合が続く激戦区として知られている。特に初戦が重要となってくるだけに、各チームエース級の投手が先発することが多いが、今年のドラフト候補となる選手で特に高い注目を集めているのがトヨタ自動車の吉野光樹だ。
上武大では2年春から主戦となったものの、故障もあって3年秋以降は低迷。4年秋のシーズンはわずか2試合の登板に終わっている。それでも社会人きっての強豪であるトヨタ自動車に進んでいるところに吉野の潜在能力の高さがよく表れている。社会人1年目の昨年は重要な試合での登板はなかったが、今年は先発の柱へと成長。二次予選初戦となったこの日も当然のように先発を任せられたが、その重要な試合で吉野は圧巻のピッチングを見せる。
立ち上がりからストレートは140キロ台後半を連発し、最速は150キロをマーク。大学時代に比べるとフォームの躍動感と体幹の強さ、柔軟性がアップしたように見え、ボールを前でリリースすることができているので、数字以上の勢いが感じられる。スピードだけでなく両サイドを突くコントロールも素晴らしく、緩急をつけるカーブ、鋭く落ちるフォークなど変化球のレベルも高い。6回にこの日初となる連打を浴びて内野ゴロの間に1点は失ったものの、6イニングを被安打わずか3、1四球、6奪三振の好投でチームを勝利に導いた。
関係者の話では前日はよく眠れなかったと話していたほど緊張していたとのことだったが、この日のピッチングからはそんな様子は全く感じられず、社会人のエース、そしてドラフト候補として十分なパフォーマンスだったことは間違いない。チームの先輩である栗林良吏(広島)も一昨年の都市対抗二次予選の初戦で先発を任されて快投を見せて1位指名を確実なものにしたが、この日の吉野の投球もそれに近いインパクトがあった。
続く二次予選の2試合でも17回連続無失点、そして本選でも脚が痙攣して4回で降板となったものの被安打0、7奪三振で無失点と快投を続けている。今年の結果で言えば社会人全体でも1,2を争う存在であり、ここから大きく調子を落とすことがなければ高い順位でのドラフト指名の可能性は高いだろう。
西尾 典文 Norifumi NISHIO