青山学院大2-1国学院大
中西聖輝(青山学院大) 4年 投手 182cm 90kg右投右打 智弁和歌山
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一昨年は常広羽也斗(広島1位)、下村海翔(阪神1位)、中島大輔(楽天6位)、昨年は西川史礁(ロッテ1位)、佐々木泰(広島1位)と近年多くの選手がドラフト指名を受けている青山学院大。昨年は大学四冠(春秋のリーグ戦・大学選手権・明治神宮大会)を達成し、今年春のリーグ戦でも5連覇を成し遂げるなどまさに黄金期を迎えている印象だが、そんな常勝チームで今年高い注目を集めているのが中西聖輝だ。智弁和歌山では3年夏にエースとして甲子園優勝。大学では3年春から投手陣の一角に定着すると、3年秋、4年春はともに6勝をマークして2季連続で最優秀投手のタイトルも獲得している。
そして迎えた最後のシーズンとなる秋のリーグ戦。開幕カードとなった国学院大との試合は1点を争うロースコアの展開となったが、最後まで一人で投げ抜いて見事に1失点完投勝利をあげて見せた。立ち上がりは少し慎重に投げているように見え、ストレートも140キロ台中盤が多かったが、3回からギアを上げて最速は150キロをマーク。そしてそんなスピード以上に際立っていたのが制球力の高さだ。ストレートに関しては捕手の構えたコースから左右に外れる“逆球”がほとんど見当たらなかった。全体的に外角が多い配球だったが、時折内角にも狙って速いボールを投げ込むことができており、打者からすると強く踏み込むことが難しいように見える。変化球もストレートと比べると少し外れるボールは目立ったものの、緩急をつけるカーブでカウントをとり、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップなどあらゆる球種で勝負することができるのも強みだ。また走者を背負ってもスピード、コントロールが落ちることがなく、スタミナも申し分ない。相手打線も何とか中西を崩そうと小技も絡めていたが、フォールディングや牽制など投げる以外のプレーも安定しており、最後まで隙を見せることがなかった。
今年の大学生投手は昨年の金丸夢斗(関西大→中日1位)のように突出した選手は不在で、球団によって評価も分かれることになりそうだが、安定感という意味では中西が一歩リードしている印象を受ける。即戦力投手が欲しい球団が複数1位で入札する可能性もありそうだ。

西尾 典文 Norifumi NISHIO
1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。2017年からはスカイAのドラフト会議で解説を務め、最近では仮想ドラフトにも出演。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材する熱血スポーツライター。