仙台大0-2東北福祉大
桜井頼之介(東北福祉大) 4年 投手 174cm66kg 右投右打 聖カタリナ
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大学生は高校生よりも1年間長く、下級生の頃から活躍しているケースも多いため、3年の時点である程度評価が高くなっている選手が多い。それでも最終学年で一気に評価を上げてくる選手は存在しているが、今年の4年生でそのケースに当てはまる筆頭格と言えるのが東北福祉大のエース、桜井頼之介だろう。聖カタリナでは3年春にエースとして甲子園にも出場しているが、体が小さかったこともあって当時はドラフト候補という印象ではなかった。大学でも2年秋から主戦となったが、昨年までは全国大会での登板はなかったこともあって、今年の年初の時点ではそこまで評価が高かったわけではない。
そんな桜井が一気に名前を上げたのがリーグ戦の天王山となった仙台大との試合だ。相手チームの渡辺一生(4年・投手・日本航空※通信制)、平川蓮(4年・外野手・札幌国際情報)も有力なドラフト候補ということもあって、この日のスタンドにはNPB全12球団のスカウトが集結していたが、その前で桜井は圧巻のピッチングを披露する。3回ツーアウトから不運なヒットでツーアウト一・三塁とされたものの、平川から三振を奪ってこのピンチを切り抜けると、6回以降はノーヒットで4安打完封勝利をあげて見せたのだ。ストレートは筆者のスピードガンで150キロ、球場表示で151キロが最速だったが、9回に記録しており、立ち上がりから終盤までスピードが全く落ちることがなかった。さらに素晴らしかったのがコントロールと変化球で、123球を投じてストライク率は70.7%を記録。これはプロの先発投手でもなかなか見ない数字である。140キロ前後のカットボールは打者の手元で変化する必殺のボールで、130キロ台中盤のフォーク、120キロ台中盤のスライダーとチェンジアップなど、全ての球種をしっかり操ることができる。そのため打ちとるためのバリエーションが豊富で、最後まで相手打線に的を絞らせることがなかった。
その後に行われた大学選手権でもチームを優勝に導いてMVPを受賞。その疲れもあってか日米大学野球選手権では1試合の登板だけだったが、3回を投げて無失点の好投を見せた。体は大きくないものの、投手としての総合力の高さは今年の大学生の中でもトップクラスである。秋も春のような投球を見せることができれば、1位指名の可能性も高くなりそうだ。

西尾 典文 Norifumi NISHIO
1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。2017年からはスカイAのドラフト会議で解説を務め、最近では仮想ドラフトにも出演。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材する熱血スポーツライター。