2023年7月15日 都市対抗野球 東京ドーム
JR西日本0-3パナソニック
石黒佑弥(JR西日本) 22歳 投手 180㎝82㎏ 右投右打 星城
© 野球太郎
今年の社会人選手はENEOSの度会隆輝が目玉と見られているものの、全体的には有力候補が少ないという印象が強い。こういう時に浮上してくることが多いのが、今年が指名解禁(高校卒は3年目、大学卒は2年目)の年ではなく、昨年までに指名がなかったいわゆる“解禁済”の選手たちである。その中で面白い存在になりそうなのが高校卒4年目の石黒佑弥だ。高校時代は3年夏に石川昂弥(現・中日)などを要する東邦を破り、社会人でも早くから公式戦で登板している。昨年は指名がなくチームに残留となり、今年は少し出遅れたものの、この日の都市対抗初戦では先発を任された。
結果は8回途中まで投げて3失点で負け投手となったが、しっかり試合を作り、改めて能力の高さを見せた。特に目立ったのがその高い制球力である。この日投じた116球のうち、ストライクは82球を数え、その割合は70.7%となっている。プロのトップクラスでも70%を超える投手は稀であり、都市対抗という大舞台でこれだけの数字をマークするのは見事という他ない。もちろんストライクをとれることと、制球力の高さはそのままイコールではないが、下半身主導の安定したフォームで縦に腕を振ることができており、左右のコントロールを間違えるいわゆる“逆球”がほとんど見られなかった。少し外角が多いのは気になったものの、外角の出し入れだけでしっかり試合を作れるのはさすがである。
ストレートの最速は149キロと最近のドラフト候補の中では驚くような数字ではなかったが、立ち上がりから降板する8回途中まで大きく数字が落ちることがなく、平均球速でも145.0キロをマークした。また130キロ前後のスライダー、135キロを超えるカットボールとフォークもしっかり操り、変化球のレベルも高い。この日はわずか2球しか投げなかった緩いカーブが使えるようになれば、更にピッチングの幅が広がるはずだ。
冒頭でも触れたように解禁済の選手はどうしても注目度が低くなりがちだが、大学4年生の有力候補と比べてもその総合力は決して見劣りするものではない。むしろアマチュアトップクラスの大舞台でもしっかり試合を作れる能力を評価している球団も必ずあるはずで、意外に早く名前が呼ばれることも十分に考えられるだろう。
西尾 典文 Norifumi NISHIO