2023年4月7日 東京新大学野球春季リーグ戦 大田スタジアム
流通経済大6-0駿河台大
萩原義輝(流通経済大) 4年 捕手 180㎝85㎏ 右投左打 東海大相模
© 野球太郎
今年の捕手では下級生の頃から大学日本代表にも選ばれている進藤勇也(上武大)が高い評価を得ているが、総合的に見てそれに次ぐ存在と言えるのが流通経済大の萩原義輝だ。東海大相模では井上惠輔(現・東海大)の控え捕手だったが、3年春の関東大会では怪我の井上に代わって全4試合にスタメン出場し、チームの優勝に貢献。当時から素早いスローイングには目立つものがあった。しかし井上が復帰した3年夏は再びベンチを温めることが増え、甲子園でも2試合、2打席に出場しただけに終わっている。そんな萩原だったが流通経済大では1年秋から正捕手に定着。2年秋、3年春と2季連続でベストナインを受賞すると、3年春に出場した大学選手権でもチームは初戦で敗れたものの、ホームランを含む2安打を放つ活躍を見せた。
この日も4番、キャッチャーで先発出場すると、2回に迎えた第1打席で初球をとらえて左中間へのツーベースを放ち、先制点を演出して見せた。ヒットはこの1本だけだったものの、ボールを見る姿勢が安定しており、下半身を使ったスイングは迫力十分。ヘッドもしっかりと走り、左方向への打球もよく伸びるのは大きな魅力だ。第4打席にショートのエラーで出塁した時の一塁到達タイムも4.13秒をマークしており、捕手ながら脚力があるのも長所である。相手の2番手、3番手で登板したサウスポーに対して少し仕掛けが遅くなり、不利なカウントにしているのは気になったものの、最終打席ではファウルで粘ってしっかり四球を選ぶなど4番としての役割をしっかり果たした。
守備面でも2.00秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球で最速1.87秒をマーク。地肩の強さはもちろんだが、しっかり脚を使って投げられ、また縦に腕が振れるためコントロールも安定している。この日は相手打線がなかなかチャンスを作れず、盗塁をしかけられるシーンはなかったものの、それは萩原の見せるスローイングによる抑止力の賜物であるとも言えるだろう。もうひとつ感心したのがプレーの丁寧さだ。ミットをしっかり止めてキャッチし、またワンバウンドのボールにも正面に体を入れて止めることができている。序盤にリードを奪う楽な展開でも、終盤までその姿勢を崩さないところは、東海大相模でしっかり鍛えられているという印象を受けた。
大学での全国大会の出場は1回だけで、大学日本代表も候補にとどまったということもあって一般的な知名度は決して高くないが、攻守ともに大学球界ではトップクラスの捕手であることは間違いない。順調にいけばプロでも大学の先輩である大城卓三(巨人)のような打てる捕手になれる可能性も十分に秘めた素材と言えるだろう。
西尾 典文 Norifumi NISHIO